YouTubeで2600万回再生されている動画。それは言葉が持つ力を1分48秒のショートフィルムで収られている。
The Power of Words / Andrea Gardner (YouTube)
目の見えない盲目の男性が道行く人にお金を恵んで貰うため、ダンボールにメッセージを書いて座っている。
そこには、
I’M BLIND PLEASE HELP
(私は目が見えません、助けてください)
そんな男に道行く人の多くは目を止めない。
そこに、サングラスをかけたひとりの女性が男の前で足を止め、無言でダンボールを手に取り、男のメッセージを書き直す。
何をされているのかわからない男は不安になり、女性の靴を触る。
ダンボールに書かれたメッセージが女性の言葉に変わった瞬間、男の前を横切る多くの人が次々に腰を落としてお金を置いていくようになる。
男は再び自分の前にあらわれた女性の靴を触り、あの時の女性であることを確認する。
男は女性が何を書いたのか尋ねた。
盲目の男性
What did you do to my sign?
(何を書いたんだい?)
女性は男の肩に手を添え、
I wrote same at different words.
(あなたと同じことよ、“違う言葉”でね)
女性
と言って、その場を立ち去る。
男と女性の会話は、
男性
Excellent
(ありがとう)
という、男の言葉で終わっている。
自分のすぐ横にあるダンボールに書かれた言葉を男が知ることは、この先もないのかもしれない。
女性が男のダンボールに書いた言葉、それは
IT’S A BEAUTIFUL DAY AND I CAN’T SEE IT.
(今日も素敵な日だね。でも、僕にはそれが見えないんだ)
世界は変えられる、言葉を変えるだけで
このショートフィルムは、例え同じ内容であっても言葉を変えるだけで人の受け取り方や行動はこうにまで変わるという「言葉が持つ力」を収めた動画である。
通りすがりにたまたま見かけた言葉から一瞬で人を動かす言葉を思いつくこの女性も凄いが、人は頭の中に過りもしないことを言葉に置き換えることはできない。
こういう言葉が瞬時に出てくる人、そして誰の目にも触れないところで一切の対価を求めずに困っている人を助けられる人は、年齢関係なく人として尊敬に値するといえるだろう。
頭でわかっていても実際に行動に移すことには少なからず抵抗がある。なぜなら、自分が書き換えた言葉で、今より状況が悪くなる可能性もゼロではないからだ。
このような人が実際に存在するとすれば、それは言葉が持つ力とその言葉が人に与える影響を熟知した、繊細で人の痛みや苦しみを自分のことのように感じることができ、今どうすることが最良の選択になるかを瞬時に判断できる人だろう。
人は悪いことや後ろめたいことがあるのを自覚しているときほど匿名を使いたがるものだが、人のためになることや良いことをしたときほど、匿名を使える器の大きな人間でありたい。
The Power of Words/Andrea Gardner (YouTube)