ウィル・スミス主演の映画、FOCUS(フォーカス)の後半の台詞で登場するゴーシェイリアクション。
行動経済学用語でいわれるゴーシェイ反応とは、どんな反応のことをいうのか。
ゴーシェイ反応とは
ゴーシェイ反応とは、英語でGauchais Reaction(ゴーシェイ・リアクション)と書く。
聞きなれない言葉だが、NLP(神経言語プログラミング)でいうミラーリングと似た意味を持つ。
相手の身振りや手振りなどの身体的動作を模倣し、共感を誘発させる心理テクニックのひとつ。
心理学者がミラーリングという言葉を使っているので、ゴーシェイ反応よりもミラーリングという言葉が一般的に周知されているという声もあるが、実際ゴーシェイ反応とミラーリングでは解釈が少し異なる。
ゴーシェイ反応とミラーリングは同じ?
ミラーリングは相手の身振りや動作にこちらが合わせにいくことをいうが、ゴーシェイ反応は相手が心を開いて共感したことで、こちらの身振りやうなずきなどの動作に対して無意識に同調してくる行為である。
相手がミラーリングをしているわけでもないのに、こちらから見ればミラーリングをされているように見える行為がうかがえる状態。
つまり、こちらが何らかの目的をもって相手を誘導させ、それに相手が共感することによってこちらの身振りや動作に無意識に同調してしまうようになる、これがゴーシェイ反応である。
ミラーリングをされているかのように見える相手の行動も、ゴーシェイ反応の場合はあくまでも仕掛けているのはこちら側だということだ。
リアクションとは、仕掛けられる側が示す反応のことをいう。
ゴーシェイ反応が成立する瞬間
You know you got them when they start to unconsciously mimic you.
(無意識に身振りを模倣するようになったら成功だ)
映画の中では、相手が(無意識に)こちらの身振りや動作を模倣することをゴーシェイ反応と言っている。ミラーリングと解釈が同じだとするなら、これではこちらがミラーリングされていることになってしまう。
意味はミラーリングと似ていても、基準となる対象が違うのである。
ゴーシェイ反応は、その行為自体に共鳴を示す意味が含まれており、相手がこちらを受け入れたことが目に見える形になってあらわれた反応といえる。
現実が映画のとおりになると思っている人は失敗する
映画の中では、ゴーシェイ反応の前後でこんな台詞が入る。
ウィル・スミス
人を信用させるツボがある。
女には”絆”がすべて。
真実の愛を証明すればいい。
少女時代の夢のとおりに昔なじみに会わせ、懐かしさで疑念をそいでおく。
そこで想いを伝えれば武装が解けて心を開く。
身振りを真似したら成功だ。
うなずきや手振りの同調は社会学でいう”ゴーシェイ反応”だ。
”君のために変わった”が殺し文句。
価値観の変革だ。
最後の詰めは、ずっと想ってたと伝える贈り物。
前半はいいとして、問題なのは後半の三行の一行目と三行目である。
相手が欧米人ならこういうのはいいのかもしれないが、今の日本の女性相手に
- 君のために変わった
- 価値観の変革だ
- ずっと想ってた(+贈り物)
なんて言葉をかけると、恋愛ドラマや恋愛映画にかぶれている人間の台詞みたいに聞こえ、そこに本人の本当の想いや言葉が見えなければ気色悪いと思う女性もいる。
事実、女性を口説くときに他人の言葉を引用して落ちるほど女性は簡単ではないし、本気なら例えうまく伝えられなかったとしても、最初から最後まで自分の言葉で伝えるのが相手の女性に対して本来あるべき姿勢である。
自分の本当の気持ちを受け入れてほしいときに、“少しでも良く思われたい“という理由で映画やドラマで出てくるような台詞を持ち込むのは、自分の気持ちを偽っているのと変わらない。
本気であるかのように振る舞いながら、他人の言葉で口説こうとしているからだ。だから、刺さらず失敗するのである。
付き合いたい女性と付き合えない男性ほど、女性を勘違いしている。はっきり断っておくが、見た目よりも人柄を重要視する女性は、男性にカッコいい台詞なんかこれっぽっちも求めていない。
なぜなら、少しでも自分を良く見せるために他人の言葉を借りようとする愚かな考えより、例え不器用であっても、最初から最後まで自分の言葉で気持ちを伝えようとするその姿勢に誠意を感じ、心を打たれるからである。
もし、映画やドラマの台詞で落ちてしまうようなら、それはよっぽど単純で騙されやすい女性なのかもしれない。
すべての女性がそうとは思わないが、すでに相手があなたを受け入れている場合を除けば、日本の女性にこういった文句は不向きである。
そもそもだが、「君のために変わった」という言葉は相手のために更生しようとした本人が自分の口から言うことではない。本当に変わったかどうかはそれを見た自分以外の人間が判断することである。
よって、自分の口から「自分は変わった」というと、それを聞いた女性は自分を安心させるためと、その事実を確かめるためにしばらく様子を見ようとするはずだ。その場ですぐにOKをもらえることはまずないだろう。
自分が本当に望んでいることを自分の口から言ってしまうと、結果的に遠回りになるケースは非常に多い。もっとも合理的なのは、自分が望んでいることを自分の口からは言わずに相手に悟らせることである。
「ずっと想ってた(+贈り物)」、これもよくない。
「ずっと想ってた」という言葉には、そう思ったときから相手の妄想を膨らましていたという意味が含まれる。
女性
この人、私のこと繰り返し妄想してたんだ…
と思われれば、気持ち悪いととる女性もいる。すでに仲良くなっていて相手が自分に心を開いた後ならいいが、数えるほどしか接触していない間柄でこれをやると、伝え方を誤ったときに相手を警戒させてしまい、面倒なことになるだろう。
人は感情的になると言葉でそれを補おうとする。相手の気を惹こうすることばかり考えるため、
男性
なんて言えば振り向いてくれるか
どんな言葉を使ったら受け入れてくれるか
を必死に探し、自分目線の都合のいい言葉しか見つからない。大多数の男性は、言葉で何とかしようと考えるはずだ。
しかし、言葉は自分で思っているほど相手には届いていないものである。
こういう言葉を使ったら、相手にはこういうふうに聞こえるだろうな…
女性
と自分では思っていても、実際そのとおりに聞こえていることは極めて少ない。
では、どうすれば相手から信用を得られるかということだが、それは行動することで解決する。
100回の言葉より1回の行動がモノをいう
人は同じ言葉を100回聞かされるよりも、一回それを示す行動を見せられることで、信用しようとする方向に思考が切り替わる。
理由は簡単で、「動いた」「行動した」という事実はその時点で過去になるため、どんなことがあろうと絶対に変わらないからだ。
行動が直接の信用に繋がるのは、変えられない事実を先に作ってしまうことで説明がつくだろう。
例えば、クレジットカードや携帯電話の支払いが滞ると、指定信用情報機関(CIC)などにその事実が残ることはご存じだろう。極論だが、クレジット会社や携帯電話事業者に、
- 必ず払います!
- 期日までに納めます!
男性
と言ったところで、どこの誰かもわからない一個人の客の言葉を信じる企業などどこにも存在しない。
むしろ、払うかどうかなんていう保障もない個人の言葉はどうでもよく、彼らは「引き落としができた」「引き落としができなかった」という、記録として残る変わらない事実が欲しいのである。
つまり、彼らから信用を得るためには毎月請求で上がってくる金額を指定された期日もしくは期日までに納めることでしか信用を得る方法はない。
期日までに支払いを完了させるという行動の積み重ねが信用を大きくしていくわけで、それさえきっちりしていれば、そこには信用を得るための言葉なんてのはまったく必要ないのである。
よって、はじめて顔を合わせた人や互いのことをよく知らない人から信用を得たいというときは、言葉であれこれ言うよりも相手の利益に繋がることや相手がそれをしてもらって助かることなどを探り、先に動いてしまえばいい。
言葉と行動が伴わないと言われる人は、行動よりも口がよく動く人なはずである。自ら口にしたことを守らなかったり、言葉で信用させるようなことを並べといてはその時が来ると悪気もなくすっぽかしたりする人がそう言われるはずだ。
したがって、こういう人の言葉は聞けば聞くほど疑わしく、相手が必死であればあるほど聞いているほうは心底信じるのは危険だと思うようになる。
まとめ:Gauchais Reaction(ゴーシェイ反応)
この映画をご覧になられた方はわかると思うが、ゴーシェイ反応はミラーリングのように単独で成立するものではない。
その反応が目に映るまでには、段階を踏んだ刷り込みと仕掛けが必要になり、相手との関係性によってもそのプロセスは変わってくる。
この3人の関係が事前にあったからこそ、成功したテクニックといえるだろう。
映画のスペシャルサポーターを務めたマジシャンのKiLa氏も、映画の仕掛けには心地よく翻弄されたということなので、潜在意識や行動心理に興味のある方は手に取ってみてはどうだろう。