日本人が「無料」や「限定」という言葉に弱いというのはすでにご承知のことだろう。ところが、残り一つになった限定品が売れなくなることがあるという事実は、商売をしている人ですら知らなかったりする。
それどころか、残り一つになった商品を煽るように告知する人がいるから驚きだ。
今回は、残り一つになった限定品が売れなくなる理由と、そこに絡む人間心理について解説する。モノを売る機会がある人や、商売をしている人はぜひ覚えておくといいだろう。
深夜の通販番組で見られるお決まりの文句
- この番組終了後、30分以内にお電話をいただいた方限定で特別価格の○,○○○円でご提供!
- この商品をご購入いただいたお客様にだけ、さらにこちらも無料でお付けします!
深夜のショッピング番組で必ず出てくるこれらのフレーズ。
時間に縛りを入れて、その時間内に購入の意思を示した人には本来の価格よりも安く手に入れられることを示唆するような言い回しを使ったり、通常ならついてこない商品をある条件を満たすことで無料で付けるといった、商品を購入してもらうために必要な行動(電話をかけさせるなど)を促す目的として当たり前のように使われている。
最初は大して興味もなかったのに、なんとなく放送を見ていたら5分後には
- ちょっと買ってみようかな…
- あれ、ちょっと欲しいかも…
女性
と、リビングでカラダを横にして肘をついた手で頭を支えながら番組を見ていたのに、いつの間にかカラダを起こして前のめりでテレビを見ている自分に気づいたことも過去にあったのではないだろうか。
最近は、女性向けのジュエリーやアクセサリーの深夜番組が多く流れているのを見かけるが、
- ダイヤのネックレスが1カラットで10万円を切るなんて、他では有り得ません…
- ご用意できる数に限りがございますので、先着○名様までとさせていただきます。
という内容がしつこいほど繰り返し流れ、そこに希少価値を感じて購入される方も多いだろう。
心理学の中に「希少性の法則」というのがあるが、人は珍しいものや数に限りがあるものに価値を感じるという性質をもっている。
例えば、「世界中で3台しかないスーパーカー」。
お金があって車好きの人なら素通りするのは難しいだろうし、どんな車なのか一度自分の目で見て確かめたくなるはずだ。
「世界中で3台しかないスーパーカー」は、一般人にとってはたったこれだけの文で「買おうと思って買えるものではない」ということぐらいは想像がつくので、最初から買えないとわかっているものにはそれほど欲しいという感情には駆られないかもしれない。
しかし、車好きなら買えないとわかっていても世界で3台しかない車と言われたら、それがどんな車なのか見るだけ見てみたいとは思うだろう。
希少性がもたらすもう一つの心理的要因
「希少性の法則」は”見せ方“によってはその効果が逆に働くことがある。
例えば、百貨店などで先着5名様限定となっている商品にたまたま目が留まったとする。価格を見ても予算の範囲内、見てみると残り3つ。
まったく買う予定がなかった商品だが、限定5つのうち2つが売れていることを確認したあなたは、もしかしたら購入を決断するかもしれない。では、限定5つで販売された商品のうち最後の一つだけが残っていた場合はどうか。
良かった!間に合った!
女性
と思って買う人もいるかもしれないが、実際その場に立つと悩んだ挙句に結局買わないというケースは少なくないのである。どういうことかというと、最後の1つになった途端、先ほどまで売れていた商品が売れなくなることがあるのだ。
これは「残りもの」という心理が、本来働くはずの「希少性の法則」を止めてしまうことにある。
- 傷モノかもしれない。
- 目に見えない何かが隠れているかもしれない。
という心理が働くためだ。
当然、販売する側は売らなければならないので、こういった希少性の法則を邪魔する「残りもの」という心理を排除するために、残り一つになりそうになると店側は商品を補充して消費者の購買意欲が失われないようにしている。
では、自分が欲しいと思っていた商品が一つだけ残っていた場合はどうか。
自分が欲しいと思っていた商品が一つしか残っていない場合も、2つ3つ残っている場合より購買意欲が下がることがわかっている。
人にはもともと「選択の自由」を求める性質があるため、例え同じ商品でも1つしか残ってない中から買うより、2つ3つ残っている中から買うほうが「自分で選んで買った」という事実が*商品購入後に自分を納得させるための論理的根拠となる。
一つの場合は例え欲しいものであっても、最初から「選択の自由」が奪われてしまうことで購買意欲が下がってしまうのだ。
ただ、本当に欲しいものであれば、再度購入のための意欲が湧いてくるもの。
これは、その人にとっての「必要性」が働くためで、希少性の法則を邪魔する「残りもの」という心理は、その人にとってそれ以上の「必要性」を感じてもらうことで購買意欲を戻すことが可能になる。
また、人は一つしかないものに対して遠慮する性質も持ち合わせており、
限定1個
「1個」と言われると、欲しいというよりも、
男性
- 自分には手に入れられないだろう
- もう売れて、すでにない
と思って、確認もせずに諦めてしまうケース多い。
まとめ:売れない限定品
人間の心理というのは実に複雑で奥が深いものである。生まれてから死ぬまで絶対に切り離せないもので、生きている限り心理は一生人につきまとう。
瞬間瞬間で変化し続ける人の感情がどういう時にどういう流れで働いているかを具体的かつ客観的に分析し、それを繰り返す。
やがて、積み重ねてきたそれらの結集が知識や技量となり、より少ない情報からでも目には映らない本質的なことに気づける力が身についていくようになるはずだ。