人はあらかじめ嘘をつくことが決まっている(用意していた嘘をつこうとしている)場合、いくつかの選択肢を与えて問いかけた質問に対して、返答やリアクションが早くなることがわかっている。
嘘の特徴やその兆候が出る場所は、そのときの状況や人によっても変化するが、必ずしもその嘘が目に映る場所に出るとは限らず、これはむしろ嘘が上手い人や嘘をつき慣れている人ほど、視覚以外の場所に出やすいといえるかもしれない。
感覚器の50%が視覚に依存
本題に入る前に、人が取り込む情報の割合について解説しておこう。
人には第六感を除いて5つの感覚器が備わっている。視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚の5つだ。
そこで、この5つの感覚器の中で機能しなくなるとあなたがもっとも不便で困る感覚器を考えてみてほしい。
- 一切、目が見えなくなる
- 一切、音が聞こえなくなる
- 一切、匂いがわからなくなる
- 一切、味を感じなくなる
- 一切、感覚を感じなくなる
あなたはどれを失うと、もっとも困るだろう。恐らく、ほとんどの方が最後は同じものを選ぶことになるはずだ。
音が認識できなくなったり、匂いを感じなくなったり、味がわからなくなったり、感覚を奪われたりするのは大きな苦痛を伴い大変不便になる。しかし、一番困るのは目が見えなくなることではないだろうか。
目が見えなくなれば、何がどこにあるのか物の位置関係がまったくわからなくなる。車に乗ることもバイクに乗ることも自転車に乗ることもできなくなり、恐怖が走ることを奪うばかりか、外を歩くだけでも常に恐怖が付きまとうことになるだろう。
ストレスは極限にまで到達するはずだ。
当然、映画を観ることもできなくなり、好きな人やこれから好きになる人の表情も見ることができない。携帯の操作すらもできなくなるのだ。人は視覚が機能しなくなるのがもっとも辛く、不自由になる。
人が外部から情報を取得する場合、全体の50%が視覚に依存していると言われており、残りの50%をその他の感覚器がカバーしている。ここでは、それだけ人は視覚に依存しているということだけわかっていただければいい。
目に障害がある人を除いて、ほとんどの人は視覚に依存している。そのため、嘘を隠そうとする場合は嘘がバレないようにできるだけ自然体を装うとするので、視界に入る場所にはなるべく特徴が出ないようにしようとする。
人間の性(さが)だ。
これは無意識の領域で起こるのだが、その中には瞬きを抑えたり、視線を反らさないようにしたり、体を動かさないようにしたり、唇を畳み込まないようにしたりなどが含まれる。
相手の視覚に入る場所にその特徴を出さないために、一連の反応を統一しようとするのである。
先ほどの感覚器の話で、人は全体の50%が視覚に依存しているという話を出したのはこのためだが、こういう人は視覚以外の場所にその特徴を見せることがある。
視覚に映らない嘘の特徴
例えば、声のトーンや返答までの時間が速くなるケース。これらは視覚から入る情報では取れない。
嘘の特徴は人によっても、またその時々によっても変わるので決まった答えはないが、今回は返答までの時間の速さに注目してみることにしよう。
なぜ、嘘をつくと人は返答が速くなるのか?
この場合、一つではなく複数の選択肢を用意する必要がある。複数の選択肢を用意する理由としては真実と虚偽の反応の違いを見分けるためで、一つや二つではその違いが判断しにくいからである。
真実であるときは隠す必要がないので心に余裕が生まれるが、嘘に直面したときはその嘘を隠そうとするため、少なからずプレッシャーがかかる。疑われたときの一例に返答が速くなるケースは、そのときのプレッシャーや疑いから早く逃れようとする無意識下で起こる行動なのである。
観察力を鍛える
観察力が弱く感覚に敏感でない人は、相手の返答が速くなったことにも気づかないかもしれない。コンマ何秒の違いなので、集中していないと気づけない場合が多い。
特に目から入ってくる情報を瞬間的にどれだけ取り込めるか、耳から入ってくる音にも敏感である必要がある。
こちらが疑いをかけて何かを訪ねているときに、質問が終わっていないうちに言葉をかぶせてきたり反論してきたりする場合、または隠す必要のない真実を疑われているときは落ち着いた返答だったのに、ある質問にだけ最初から決まっていたかのように躊躇なく返答をしてきたときは怪しいかもしれない。
まとめ:嘘を一瞬で見破る
人はある事柄や事象に受けた影響から、反応や行動が決まる。
何かを誤魔化そうとするとき、疑われることによっぽど慣れている人でない限り、その嘘を瞬時に他のものにすり替えることを考えられる人は少なく、多くの人は隠すことに意識を向けてしまう。
どんな人でも、自分が意図せぬタイミングでプレッシャーをかけられたり、不意を突かれたりすると緊張が走り、それが相手の勘違いや真実と異なっているのであれば動揺することはないが、図星の場合はその反動が必ずどこかに出てしまうのは切っても切り離せない人間のメカニズムである。
嘘の特徴は人によってもそのときの状況によってもあらわれる場所が変わり、どこに出るかはそのときにならないとわからない。こればっかりは、一つ一つ経験して覚えていくしかない。そして、一瞬であらわれて消えていく、その瞬間を見逃さない力も必要になってくる。
視覚に映る嘘の特徴
最後に視覚に映る嘘の特徴の一例を以下に並べておくので、参考にしていただければと思う。
ただ、不安や緊張からも似たような反応が出ることがあるので、下記の反応が出たからといって相手が嘘をついていると決めつけるのは、トラブルの原因になるのでしないように。
- 瞬きの回数が普段より多くなる。
- ( 皮膚の薄い )耳を触る。
- 手で何かを隠そうとするときは、利き手を避(相手から遠ざ)ける。
- 追い込まれた自分を勇気づけようとすると、鼻を触る。
- 探られたくない心を掘られそうになると、手で口を隠す。
- 手遊びが増える。
- 相手を信用していないとき、腕を組んで顔を背ける。
- 不安になると、いつもより喫煙回数が増える etc…
なぜ、こういう行動を無意識に取ってしまうのか、ぜひ考えてみてほしい。
すべての行動は、目に見えないところに隠れている真実に基づいた行動なのだ。