相手の記憶を「香り」で操作する方法

相手の記憶を「香り」で操作する方法

人間の感覚器官の中で、もっとも多くの情報を瞬間的にキャッチするのが「視覚」である。

相手を説得したり誘導するときなどは、この特徴を利用して相手に「見せる」「認識させる」ための情報を視覚から刷り込むのが一般的だが、五感の一部である「嗅覚」を刺激することでも、相手に大きな印象を残せることが研究によって確認されている。

脳科学の知識がある人はご存知だと思うが、人間の嗅覚は脳のもっとも深いところにある大脳辺縁系という組織に対して大きな作用をもたらすことがわかっており、この大脳辺縁系が人間の記憶や感情に深く関わっているのである。

大脳辺縁系

嗅覚と直接結びついた、食欲・睡眠などの本能的行動や喜怒哀楽などの感情をつかさどる場所で、五感の中で嗅覚だけがもつ特徴。

つまり、「匂い」と関連付けられて形成された思い出がある場合、その匂いを嗅いだだけでその時の記憶が蘇ってくるということが起こる。

例えば、こんなケースがある。

5年前、あなたはある女性と付き合っていた。

 

価値観のズレで別れることになったが、お互いに相手のことを尊敬し合える仲だった。喧嘩をしたこともあったし、一緒に泣いたこともあった。

 

5年が経過した今、あなたは別の女性と交際中で、当時付き合っていた彼女の存在は完全に頭から消えている。

 

現在付き合っている彼女と世間話をしながら街を歩いていると、向かいから一人で歩いてくる女性が視界に入った。しかし、見たこともなければ会ったこともない、どこの誰かもわからない、どこにでもいる女性である。

 

「よくあることだ」と思ったあなたは一度その女性から視線を外すが、女性とすれ違った瞬間、5年前付き合っていた彼女がつけていた香水とまったく同じ匂いが鼻を突く。

 

完全に自分の中から存在が消えていた5年前の彼女が急に脳裏に蘇り、あなたは隣にいる彼女のことも忘れて振り返り、足を止め、その女性を見送るように目で追っている。

これとまったく同じ経験をした人の中には、彼女とデートを終えた後、当時の彼女に連絡を取って「寄りを戻した」という人もいるかもしれない。

プルースト効果で異性を惹きつける

プルースト効果を使うと、通常よりも強い印象を相手に残すことが可能になる。

プルースト効果

香りを嗅ぐことで、その香りに関連付けられた記憶や感情がよみがえる現象。

自分の存在をより強く残したいと思う相手がいるときは、この特性を利用しない手はないだろう。

ただし、プルースト効果を使うときには注意しなければならないこともあり、使い方を誤ると逆に不快な印象を与えることになる。

例えば、相手に印象付けたい気持ちが強ければ強いほど、それを匂いの強さで表現しようとする人は少なくない。体のあちこちに香水を振りまくったり、それを一日に何度も繰り返したりするのは、女性を勘違いしている男性に多い、典型的な例の一つである。

自分が好む匂いに対して抱く感情を、相手も同じように感じるはずだと思い込むのである。

匂いというのは、さりげなく香る」からこそ相手にインパクトを与えるのであって、鼻を突くようなプンプンする臭いや、横にいて常にその匂いが漂っているような状態は、やがて「不快感」となって相手に届くようになる。

街ですれ違ったときのふわっとくる風に一瞬だけその香りを感じられたり、相手の体に触れるぐらい近づいたときにはじめてその香りがする程度に抑えるのが、自分の印象がその匂いと関連付けられて、相手の記憶深くに残ると覚えておこう。

香りを関連付けてイメージを強くする

私たちは、匂いを嗅いだだけで「それが何か」を認識する能力を持っている。

例えば、エタノールの臭いがすると注射直前に腕に塗る消毒をイメージしたり、家の中で焦げた臭いがすると走ってキッチンを確認しに行ったり、人から酸っぱい臭いがすると汗臭いと感じ、潮の匂いがすると海が頭を過ぎる…、といった具合だ。

つまり、記憶の中で匂いと結びついて定着しているものは、その匂いを嗅いだだけでそれに関連付けられているものが呼び起される。

そして、それらの匂いがあるとき急に変化することはない。

したがって、相手の記憶に「香り」を関連付けて自分の印象を書き込む場合は、香りを一つに統一させる必要がある。

その時々で匂いが変わったり、会うたびに匂いが変わるようなことがあると、あなたと「その香り」が結びつかなくなるからだ。

「控えめな匂い」のほうが記憶に強く残る

どれだけ相手に好感をもたれる匂いでも、常にその匂いが鼻を刺激している状態は相手を疲れさせる原因になることがある。

好感をもてる匂いであればあるほど、ふとした時にその匂いを感じられたほうが、人はそれを「その人の自然な匂い」と思いやすく、意識的に作り出した香水のような匂いとは違い、一定の距離を超えないとその匂いを感じられないようにしておいたほうが、結果的に都合がよくなるのである。

例えば、最近では洗剤でもなく柔軟剤でもない「香りづけビーズ」という商品が出ている。「匂い」に加えて、「清潔感」も同時に印象付ける効果が期待できるものだが、ほとんど密着した状態か、顔を服などに近づけないとそこまで匂いはしない。

つまり、強くもなく弱くもないが、その匂いの元に近づくとはっきりとその匂いを感じられるという程度に抑えておいたほうが、本当にその匂いに好感をもたれたときに、相手のほうからその匂いを求めて距離を縮めてくる可能性を高められるのだ。

これは、相手のパーソナルスペースに侵入する方法を逆に応用する方法でもあるので、ぜひ覚えておくといいだろう。

参考までにお伝えしておくが、香水のようで香水でもない、でもやっぱり香水っぽい香りがするのが「ファーファ」から出ているフレグランスである。

ファーファの「オム」はブルガリブループールオムに限りなく近く、「ボンコンジェ」はクロエのオードパルファムに近い匂いがする。

香水のような匂いなのに、香水ほどしつこくないのが特徴である。これらは、消臭または芳香剤として薬局などで販売されていて、店によってはテスターも用意されている。

特に、クロエのオードパルファムは20代半ばから30代半ばの女性に広く支持されている大変人気の高い香水なので、匂いが気に入った方は、服や車のマットなどにプッシュしておくと、車内に程よい香りが広がるのを体感できるだろう。

プルースト効果は、「ん?今の匂いどこからした?」と相手がその匂いの出どころを探したくなる程度に抑えることが、あなたの印象がその匂いともっとも強く関連付けられるベストな選択と覚えておこう。

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